東住吉区・山坂から桃ヶ池

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■スポット解説

 大阪といえば、「泥臭い」というイメージがある。テレビで大阪を紹介する場面では、まず間違いなしに最初に映るのは、道頓堀のネオンとかカニとかフグである。あるいは通天閣か。私は、こんな大阪の「泥臭さ」というか、これでもかっ!という「余剰」の感覚が好きである。

 しかし十把ひとからげに大阪といっても、各方面で印象は異なる。どちらかといえば、北方、摂津地方から神戸方面にかけては、高級なイメージ(芦屋とかあるからね)、対して南方、河内とか和泉、大和方面にかけては、「泥臭い大阪」の中でも、もっとディープなイメージである。

 しかし、だからといって南方は全て庶民的な下町かといえば、そうではない。阿倍野区の帝塚山などはその筆頭だろう。また、最初にご紹介した北畠なども閑静な住宅地である。

 JR阪和線の南田辺駅から東に少し入ると、ここにも静かな住宅地がある。それが山坂だ。ここらへん一帯は古くからの集落らしく、ちょっと街角を歩いてみても、落ちついたたたずまいがあちこちにうかがえ、いわば「街の年季」といったものを感じさせる。

 山坂の住宅地のほぼ中央に鎮座するのが、山坂神社。古墳の上に建てられているのではないか、と推測されている。なるほど、周囲よりも小高い台地の上にあり、さもありなんと思う。この神社は決して小さなものではなく、境内を歩くと近所の商店街の声さえ聞こえないような静寂さに包まれている。木陰も心地よさそうな場所である。また「田辺不動」としても有名な法楽寺も一度は見ておきたい。

 この山坂の静かな町並みを数百メートル北の方へ行けば、桃ヶ池に出る。なんでも大阪市内ではほとんど自然の池が埋め立てられて、残っているものは数少ないらしい。桃ヶ池は、その数少ない池のひとつである。もちろん護岸工事などは施されているが、池の中にある小島や周囲の遊歩道を歩くと、少し土の香りがあるるような気がする。春には桜の花見にも最適な、近場のピクニック・スポットである。



■地図とおすすめコース


●山坂神社

古墳の上に作られたといわれる神社。聞くところによれば、旧い文献にも「田辺西社」として記載されているらしい。ちなみに「田辺東社」は東住吉区の中野にある中井神社といわれています。中井神社が現在、住宅地の中に埋もれたようになっているのに対し、こちら山坂神社は、堂々たる風格。

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●法楽寺

「田辺の不動さん」としても有名なお寺。私がこの前行ったとき(もうだいぶ前の6月のことになりますが)何か建てている最中(改修かなあ?)で、ますます立派なお寺になる様子。

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●桃ヶ池

ここも長池と同様、昔からの池がそのまま残っている数少ない場所。
ボクはいつも4月頃行くので、この池の印象といえば「桃」よりも「桜」なのです。
とにかく池を取り囲むように咲き誇る桜は見物。もちろん桜シーズンだけではなく、一年中楽しめる公園ではありますが。
池の中には島があったり、非常に「表情豊か」という言葉がぴったりなほど、ながめているだけでも楽しい。そういえばボクが子供の頃の池とか川には、ずいぶん表情があったなあ、と桃ヶ池に来て実感しました。


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●大阪市立工芸高校

桃ヶ池からはちょっと距離がありますが、できるなら足をのばしてみたい。
ボクの友人のデザイナーたちも、ここの出身者が多いんですが、工芸高校の校舎は建築物として優れたデザインを見せてくれます。「さんぽに連れていきたい本」のページにもある海野弘さんの「モダンシティふたたび」の中でも「大阪バウハウス」のタイトルで紹介されている、昭和初期の名建築です。
海野さんの著作によれば、これは当時の大阪市の建築課の人の設計だとか。「お役人やお役所も、昔はエエもん作ってたんや!」といいたくなりますよ。

   
(C) 1997 Takashi Tanei, office MAY