住吉区・熊野街道をゆく

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■スポット解説

 大阪市南部でもっともメジャーな史跡というと、まず誰もが住吉大社をあげるだろう。海からの入り口として発展した大阪の故郷とも言える場所かもしれない。ここの代々の神官の姓は「津守」という。「津」とは昔の言い方で「港」のことである。まさに港町大阪を守るべく作られた社なのだ。そういえば近くには灯台もあった。

 住吉大社に行ったなら、神社を見て回るだけでなく、その周囲の街にも注目してみたい。

 <なお、住吉については、我孫子在住の瓦井さんご一家が開設されておられる「瓦井ファミリーページ」の中に、「私的住吉学」というページを作っておられるので、ぜひ一見を>

 この近辺を南北に走る熊野街道沿いには、古い民家が結構あって、昔ながらの街道筋の雰囲気がわずかながらだが残っている。その街並みを見ながらさんぽしてみよう。

 出発点は帝塚山の万代池から。大阪市内を代表する閑静な住宅街のほぼ中央に位置した大きな池である。その周囲には緑の豊富な公園がある。聖徳太子が魔物を退散させるため、この池で曼陀羅をあげたという。曼陀羅がなまって万代という名前になったという。あくまで伝説だが・・・

 帝塚山方面から住吉大社へ向かう途中に通るのが、熊野街道である。かつて「蟻の熊野街道」と呼ばれ、多くの参拝客が往来した街道だ。熊野街道を説明した標識なども整備されているのがうれしい。街並みも、長野県の妻篭や追分というわけにはいかないが、所々に白塗り壁の往時を偲ばせる民家があったりして、それらしい雰囲気はある。ただし、自動車は少なくないようだ。

 熊野街道を長居公園通近くまで進むと、細江川に出る。名前の通り細い川で、護岸工事も施されているが、町中をクネクネと流れる風景に、街と川が一体になった面白さがある。所々川に沿って歩ける場所があるので、ぜひさんぽしていただきたい。川に沿って曲がる度に、目の前にいろんな光景が現れる。それが楽しい。




■地図とおすすめコース


●万代池

「さんぽガイド」をご覧くださった住吉区のHiroさんご推薦のスポットでもあります。
大きな池を中心によく整備された公園です。池の中央には島があり、橋が架けられて渡れるようになっています。桜をはじめ木々も豊富に植えられており、ぶらり池を一周するだけでも充分気分転換が図れます。この万代池の周囲は、大阪有数の高級住宅地。
その閑静な立地にあいまって、落ちつきのある表情を持っています。








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●熊野街道

南海高野線住吉東駅の西側あたりの道。「熊野かいどう 八軒家から9.6キロ」の道しるべがあります。
熊野街道は天満橋から始まって、大阪市内を縦断する道として現在でも生活道路になっていますが、この近辺が最も、昔ながらの風情を残しています。
基本的には、大阪市の昔からの住宅地という感じの風景ですが、所々に白壁にウダツが上がっている家や、古いモニュメントがあったりして、「ああ、街道の跡だな」という気分にさせてくれます。
かつて「蟻の熊野詣」(熊野へ参拝する人が、蟻の行列のように続く賑やかな街道だという意味)といわれた当時を偲んでください。

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●細江川(細井川)

住吉大社の南から千躰まで約1キロほど続く川。資料などを見ると「細江川」なのに地図には「細井川」となっています。阪堺電軌の駅名でも「細井川」になっています。途中で名前が変わっているのかなあ。ご存じの方、ご一報ください。
(ちなみに熊野街道が細江川を渡る橋のたもとに、「八軒家から10キロ」の道しるべがあります)



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●浅沢神社/大歳神社

細江川(細井川?)をはさんで両岸に建っている神社。お寺さんで隣り合っているというのは山ほどありますが、同等規模の神社がこんなに隣接してあるのは、めずらしいんじゃないでしょうか(私が単に他の例を知らないだけかもしれませんが。ただし大きな神社の中に、小さな神社が付属的に建てられていたり、衛星的に周囲に配置されているケースはある)。
同等規模というものの、それぞれの神社の趣は違います。
南岸の大歳神社は朱塗りの柱などが鮮やかで、どちらかというと華やかでオープンな感じ。
一方、北岸の浅沢神社は石造りの印象が強く、どっしりと落ちついた感じ。周囲に堀があり(私がいった時には水がなかったですが)神社全体の印象を、(よい意味で)クローズドにしています。また、ここは「かきつばた」の名所でもあったらしい。
どちらも、「町中のどこにでもある神社」という一言でかたずけるのはもったいない存在。タイプの違う二社をめぐることができる、お得な(?)スポットでしょう。

   
(C) 1998 Takashi Tanei, office MAY