「ボツ書評サルベージ」コーナー

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「ボツ書評サルベージ」とは…

私は、2003年の春より、季刊雑誌『BOOKISH』で、書評などを書かせていただくようになりました。まぁしかし、当然と言えば当然なのですが、書いたもの全てが全て、掲載されたわけではありません。
掲載されなかった理由は…

1)編集長にダメを出された
2)ページの字数の関係で割愛された
3)最初に書いた字数では収まらないため、短縮版に書き直した
4)ジャンルが重なっており、別のジャンルのものに変更した
5)発行するタイミング(季刊)から見て、旬の過ぎた本になっていた

などなど、いろいろであるのですが、書いた私としては、このまま闇に葬るのは、やはり忍びない。
で、自分のサイトにこれらのボツ書評を載せるべく、新コーナーを立ち上げた次第です。
これからもボツ原稿がでるたび、順次、掲載していきますので、よろしかったらご一読ください。


●吉崎達彦『アメリカの論理』
新潮新書


「悪の枢軸」などという子供じみた用語を振り回すのが、あの国のバ(以下、略)。
こんな「青二才」っぽい行動に潜む、アメリカという国の精神性が、本書を読めば改めて実感できる。「正義の押売り」は、当分、終わりそうにないな。
(2003年5月)

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●五十嵐敬喜・小川明雄『「都市再生」を問う』
岩波新書


今こそ読むべき本。本来、住民本位である「都市再生政策」が、「土建王国」としての延命装置に過ぎないことを、本書は実によく指摘している。だから読後感は、やるせない。
本書のいう「大崩壊」を期待する心境になる。
(2003年5月)

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●内田 樹「寝ながら学べる構造主義 」
文春新書

「論」としての構造主義を学ぶなら、橋爪大三郎の「はじめての構造主義」(講談社現代新書)の方が上と思うが、現代までの"通史"を眺めるには、最適。
記述も簡潔で、ホントに「ゴロ寝」しながらでも読めるのが、ウレシイ。
(2003年4月)

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●堀越孝一編『新書ヨーロッパ史 中世篇』
講談社現代新書

 編者の堀越さんを中心に、「暗黒」といわれるヨーロッパの中世を、さまざまな視点から描いている。
 「中世」といっても、時代区分によっていろんな差異はあるし、しかも「ヨーロッパ」という地域をひとくくりにまとめて論じるのも、難しいものがあると思う。

 これは、いくらなんでも内容、盛り込み過ぎでっせ! と言いたくなるほどの充実ぶり。いや、貶しているのではなく、いい意味での「盛り込みすぎ」であるのだが。

 特に、編者である堀越さんの章は、文体もイイ味を出している。しかし、そのため話が何かとヨレているような印象がある。これが「盛り込みすぎ」の理由。

 従って、本当に本書を読みこなそうと思うなら、常にメモ用紙を携行すべし。話の要点を、そのメモにまとめ、大きな筋を確認しながら読む必要がある。その覚悟さえあれば、全編、新鮮な発見に満ちて、とても面白い。
(2003年7月)

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●吹浦忠正『国旗で読む世界地図』
光文社新書

 当然といえば当然だが、決して「国旗」では「世界地図」は読めません。あ、この場合の「世界地図」とは、地政学的な意味での「世界地図」ってことだが。

 国旗とは、言ってしまえば単なるシンボル。シンボルとは、見る人によってさまざまな意味づけがなされることで成り立つわけであるが、その意味づけの考察がなければ、本当の読み解きにはならない。

 例えば筆者は、北朝鮮の国旗を「優れたデザイン」であると語っているが、今の多くの日本人にとって、あの国の旗を「あぁ、いいデザインだなぁ」と感じる人は少ないだろう。

 同様に、「日の丸」はシンプルで私としてはいいデザインと思うが、反対に不快感を示す人は、外国の方だけでなく、日本人にも少なくはない。シンボルは常に、意味されるものとしての洗礼を浴びているのである。

 本書は「意匠」としての国旗を数多く取り上げているものの、そのあたりのことに対しては、あまり熱心でないようにも思える。というか、踏み込み辛かったのだろうと思う。

 しかし、そんなヤヤこしい話しを抜きにして読めば、結構、面白い。
(2003年7月)

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●金丸弘美『本物を伝える日本のスローフード』
岩波アクティブ新書

 私が思うに、本物志向を訴える「スローフード」という概念は、食道楽的な贅沢感に対する、一種の免罪符である。だからファストフードや安易な食文化に対する露骨なまでの攻撃性がなくては、主張としての存在意義を失う。

 その典型例が、本書。伝統的な本物の食材、調理法をカタログ的に紹介しているだけだ。「今、なぜ」の理由が、結局「伝統はいい」という回答に留まってしまっている。

 雁屋哲の戦略を見習えばよかったかもね。
(2003年8月)

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